藤川 尚

ディレクター プリセールス&カスタマーサクセス

SI Checkの概要と実行時の注意点 その1

Panayaは、ERP6.0からS/4HANAへのコンバージョンや、S/4HANAからS/4HANAへのアップグレードの影響分析時に、SI Check(Simplification Item Check)を活用しますので、その概要や実行される際の注意点をご紹介したいと思います。

SI Checkとは 

SI Checkとは、SAPの標準のツールで、ERP6.0からS/4HANAへのコンバージョンや、S/4HANAからS/4HANAへのアップグレードを行う際に、標準機能への影響をチェックしてくれるツールです 

 

SAPは、S/4HANAの各バージョンにおいて導入される標準機能の変更内容を、Simplification Itemとしてまとめており、Simplification Item Catalogとして公開しています。 

 

Simplification Itemの例として、SI2: MasterData_BPがあります。ERP6.0において得意先/仕入先マスターを使用している場合、それらはS/4HANAになるとビジネスパートナー(BP)に統合される、という変更内容ですが、これに対応するためには、関連のマスターデータやカスタマイズ、トランザクション、ビジネスプロセス、等々を変更する必要があります。 

 

SI Checkは、対象システムのカスタマイズやトランザクションデータ、使用履歴などを分析し、どのSimplification Itemが関連するのか、またコンバージョン前に修正が必要なデータの不整合はないか、などを分析します。 

 

 

SI Checkの実行方法と注意点 

 

SI Checkの実行方法は、Panayaの抽出手順書の一部としてもご説明しています。また、日本のお客様にはより詳細な日本語の手順書もご提供しております。 

 

詳細はそれらをご確認頂ければと思いますが、いくつか注意点がございますのでご紹介したいと思います。 

 

まず、作業の流れとしては、 

 1. 本番機のコピー環境を用意 

 2.Noteの適用 

 3.Simplification Item Catalogのインポート 

 4.SI Checkの実行 

となります。 

 

ここで1つめの注意点ですが、1.で、本番機ではなく本番機のコピー環境にて実施される場合がほとんどです 

 

SI Checkは上述のようにカスタマイズだけでなく、マスタデータやトランザクションデータ、使用履歴を分析します。これらのデータは開発機や検証機では部分的にしか存在しないため、本番機のデータが必要となります。また、2.でNoteの適用も必要なため、本番機への適用を避けたい場合、このような方法となります。 

 

環境面、工数面でご準備が必要かと思いますのでご注意頂ければと思います。 

 

2つめの注意点は、本番機のコピー環境における使用履歴情報です。 

 

SI Checkは使用履歴情報によって判断を行うチェック項目もありますので、この情報が欠けていると分析結果が不正確となってしまいます。 

 

使用履歴情報とは具体的にはt-cd ST03Nのデータとなりますこのデータは本番機をコピーした際に、そのまま残っており参照可能な場合もありますが、SIDを変更するなどによりコピー前のデータが参照不可となる場合があります。そのためきちんと参照可能であることの確認が必要です。また、コピー後に時間がたつと、古いデータが消えていくため、コピー後消えないうちにSI Checkを実行するか、古いデータが消えないように設定変更する必要があります。 

 

この点についての対応策として、下記のNoteがあります。 

2568736 – SAP Readiness Check for SAP S/4HANA – copy ST03N data 

本番機のST03Nのデータをダウンロードして、本番機のコピー環境にアップロードすることが可能です。 

 

ただし、この処理のアップロード先はSI Check専用の一時テーブルで、ST03Nと同じ場所ではありません。Panayaをご利用時には、Panayaの抽出プログラムは別途本番機からRFC経由でST03Nのデータを収集しますが、ここでアップロードされたデータはご使用頂けませんのでご注意ください 

 

次回は、PanayaおけるSI Check関連レポートをご紹介します。

プロフィール

藤川 尚
ディレクター プリセールス&カスタマーサクセス
外資系コンサルティングファーム、日系大手コンサルティングファームにてSAP関連のプロジェクトに参画。主にクロスアプリケーション領域を専門とする。その後、Panayaの日本法人の立ち上げから現職。Panayaの提案から導入支援、導入後のサポートまで技術全般を担当している。