山岡 英明

カントリーマネージャー

エンドユーザが本当に理解しなければならないテストの現状 その1

SAPのプロジェクトにおいて、50%以上の工数はテストにあてがわれています。協力会社が通常行う、単体テスト、内部結合、外部結合テスト、総合テスト、またユーザが行う、ユーザ受け入れテスト等、大量の工数がテストに使われています。本来であれば、これだけ工数があてがわれるテストを効率化し、納期と品質を維持できるように取り組む必要がありますが、多くのプロジェクトで有効な手段が執り行われていません。

有効な対策がとられていない要因は、大きく二つあります。一つは、テストは協力会社が行うもので、エンドユーザの立場から管理するものではないといった考え。もう一つは、有効な手段がわからないため、今までのやり方を継続してしまっているパターンです。

 

最初のエンドユーザがテストかかわるものではないといった考えですが、請負発注した場合は、確かにその考えも一理ございます。どうやってベンダーがテストを行い、品質を担保するかはエンドユーザが管理、監視するものではないので、要件定義が終了後は、あくまで進捗管理を中心に行っていけばよい。これでプロジェクトが納期通り進み、問題なく稼働できれば、この考え方は、問題はございません。しかしながら、この発想のものに実行された多くのプロジェクトで大幅な納期の遅れや、最悪プロジェクトの仕切り直しまで発展するものもございます。納期遅延等が発生した場合や追加予算が必要になった場合は、一番困るのは発注元のエンドユーザ企業です。大型なプロジェクトでは、協力会社とエンドユーザ間の役割がSilo化している弊害は、最終的にプロジェクトの失敗につながる大きな要因となっています。

 

もう一つの有効な手段が不明なため、取り組みができない部分は、テスト工程で何が工数増加の原因になっているのかを明確にすることから始めるべきです。一般論として、テスト工程でもっとも時間がかかっているタスクは、実際のテスト実行時間ではなく、テスト実行以外のドキュメントの制作および整理、進捗レポートの作成、メンバー間の非効率なコミュニケーション、不具合修正後に再テストが行われるまでのアイドル時間等々、間接的な作業がテスト工程全体の大部分をしめています。上記の問題点を理解していない場合は、テスト実行を短縮すれば、テスト全体が大きく効率化できると判断し、その対策としてテスト自動化に取り組むように協力会社に指示を出しているケースも見かけましたが、テスト自動化は単純な解決策にはなりません。テスト自動化については、別のBlogで説明しようと思います。

 

上記 二つの要因の解決には、テスト対策の考え方を変えていく必要があります。一つは、テスト工程において協力会社とのエンドユーザ間のSilo化を解消する。単純に言えば、お互いに協力し、エンドユーザがプロジェクトオーナーとして、責任を果たす必要があります。もう一つは、テスト工程のデジタル化を進め、テスト実行以外のタスクの自動化に取り組むことです。例えば、テスト実行時に証跡をドキュメント化する作業がありますが、ITがこれだけ発展したにもかかわらず、スクリーンショットをコピーしてExcel等に張り付けて、テスト証跡レポートを作成している現場が数多く存在します。このテスト証跡を作成する作業は、テスト実行作業の数倍の工数がかかっています。このような作業をマンパワーに依存せずに自動化することが必要となってきます。

 

次回は、協力会社とエンドユーザのSilo化を解消するための秘策についてお伝えします。

プロフィール

山岡 英明
カントリーマネージャー

テストツールベンダーのSEをスタートに、日本法人の副社長、大手ソフトウェアベンダーのテスト製品グループのリーダを務めた後、2015年より現職。日本ならびにアジアのトップとして、営業と技術チームをまとめ、お客様の成功を支援している。